
【桜鱒向け原点回帰】
初代Rayzに桜鱒向けとしてリリースしたモデルが RZ87H であった。
フィールドテスターの佐藤雄一氏と、長期間のテストを経て完成させたロッドは、宮城県の北上川水系を中心にして桜鱒向けロッドとして人気を博したロッドである。

続く現行レイズでは、遠投力を鍛えて全長を7inch伸ばした RZ912S-H をリリースし、北上川水系では不動の地位を築いている。
旧レイズRZ87Hが廃盤となって久しいが、その間に同スペックの必要性を感じていたのは、テスター佐藤氏本人だけでなく、多くのユーザーからも待ち望む声も少なくなかった。
佐藤氏曰く、遠投性能はRZ912S-Hに譲るとして、ここぞというスポットで誘いを掛けて、『攻めの釣り』を展開するには旧レイズRZ87Hのスペックが欲しいとの事で、もし今の技術を導入すれば新たな世界が見えるのでは?と思えたのが開発のキッカケでもあった。

【攻めの釣り】
桜鱒を狙う場合、極端に分けると下記のの狙い方に分けられる。
①遡上して間もない魚を狙って河川の下流部で遠投して広く探る釣り方。
②中流部に遡上した魚を適度な遠投と誘いを適度に加えた釣り方。
③上流(支流)に入った魚をテクニック重視で狙う釣り方。
④ランドロックの湖沼型や遡上前の個体を海で狙う釣り方。
およそは以上で狙うのが通例であり、今作のRZS872S-Hは、②の遠投&誘いで狙う事に長けたモデルだ。
『誘い』とは、トウィッチやジャークなどルアーに与える動きの変化であったり、大遠投よりは少し距離は抑えつつキャスト回数を増やしてコンタクトポイントを増やしていく事に狙いがある。
私がカメラを持って撮影に挑んだ際に思えたのは、佐藤氏の釣りは1投毎に必ず喰わせの誘いを多く入れていることをファインダー越しに見てきた。
そして、数多のキャストの中で数少ないバイトを引き出してきている。
ただ闇雲に実績ある場所で投げ続けている訳でなく、常に攻めの釣りを展開し続けた結果として、貴重なターゲットをキャッチ出来ている訳だ。
【旧モデルとの違い】

①ブランク
新旧のスペック値だけで見ると、使用するルアーウェイト、ライン設定は全く同じで、PEラインの表記が増えた程度だ。
しかし、ブランクは細くシャープとなり鋭敏さが増している。これは高弾性カーボンを細く厚く巻いて、軽量化しながらもパワーを落とさない事を狙っての事で、お家芸と言えるC・N・Tをバット部にコンポジットしたことにより、高弾性化して不足したトルクを補完している。
②ガイド
小口径、多点という面は初代の考えを踏襲しており、基本的にはPE0.8前後の使用を前提にした設定にしている。
推奨するラインは後述するとして、佐藤氏は基本的にショートリーダー派で、PEとリーダーのノット部をガイドの外に出してのキャストを推奨している。
小口径での利点は、常にブランクの近くにラインが通る事で、スラッグを出さず常に鋭い操作を実現出来ることにある。
ウィークポイントとすれば、小口径が故に氷点下の気温では、ラインが拾った水が氷結して詰まる現象は避けられない。
メインのテストフィールドであった北上川水系は1月からの解禁であり、同じ様に氷結する現象は起きうる場所でもある。
氷結して煩わしさは避けられないが、それを差し引いても操作性向上による恩恵は、数少ない桜鱒との接点を繋ぐ近道として小口径を選んだ次第だ。
③グリップ
リアグリップ長は、新旧で5mmの延長の違いでは有るが、黄金比と言える設定値だろう。
厚着をし、タックルを詰め込んだベストを着込むと、あまり長いグリップは煩わしさがある。キャスト後に脇に抱える際にグリップエンドが邪魔にならない長さを求めると、必然的に行き着く長さと思えている。
また、絶妙にグリップエンドに向けて、細く絞っているデザインのコダワリは、持った際にスッと手に馴染む太さである事を感じとって貰えるはずだ。
【タックルバランス】
佐藤氏のセッティングは下記の通りだ。
リール:ヴァンキッシュ(C3000 or 3000)
ライン:PE0.8号
リーダー:フロロカーボン14lb(矢引)
ルアー:上限30g(メタルジグ)下限(ミノー10g、スプーン14g)
リールサイズにおいては、スプール口径が大きいほど飛距離を出しやすく、ボディが小さい方がロッドを繊細に扱うことに長けてくる。
ラインは16lbや20lbといった太さでも充分問題無いが、先述した通りショートリーダーとして結び目をガイドの外に出してキャストすることを推奨したい。
【相変わらずの長期テスト】

桜鱒をターゲットとしたロッド開発には、長期のテスト期間を要する。
釣期は短い上に、そもそもヒットが少ないターゲットなので、たまたまヒットしていた程度ではテストしたとは言えないのも事実だ。
佐藤氏の思いとして1シーズンに10本以上を掛ける事を目標に、そのロッドの性能を試す事を続けてきた。
私の残したメモを読み返すと、何度も細かな改善を図りながら、完成の調子を出してきたのかが分かる。
妥協を許さず、スペクトラの名を冠するには、充分なテストと結果を残したのではないか…本当にそう思えるモデルだ。
【次世代の桜鱒釣りに向けて】
温暖化により降雪量が減り、雪解けの水が少ない事で桜鱒の遡上にも大きな影響が出る様になってきた。
ダムの排砂による影響で河川が浅くなり、釣り難くなってきているフィールドも少なくない。
こうした厳しい環境になりつつあるフィールドでも、逞しく遡上する桜鱒は居るのも事実で、アングラーは如何にしてターゲットを狙うか、道具だけでなく理論やテクニックも常にアップデートが求められる時代になった。
闇雲に投げて釣るのではなく、なぜそこに立ちキャストをするのか。
どういった誘いでターゲットを仕留めたいのか。
釣りの基本を押さえながらも、変化を捉え、仕掛けて釣る。
RZS872S-Hは、次世代の桜鱒アングラーに向けての1つのアンサーと言えるロッドだろう。
難しいターゲットだからこそ、内容を求めるアングラーに手に取って欲しい。
Staff Funaki

